高松高等裁判所 昭和35年(く)16号 決定 1960年10月22日
少年 F(昭一六・一〇・一二生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、記録中の少年名義の抗告申立書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
所論は、(一)原決定には重大な事実の誤認があり、(二)原決定は著しく不当な処分であるというのである。
(一) よつて、本件記録を調査して按ずるに、少年が原決定摘示のような事実を敢行したことは優にこれを認め得るのであつて、原決定に事実誤認の廉は存しない。
(二) 所論に鑑み記録を調査するに、少年は幼くして母○サ○に死別し父○治及び従前世話になつていた義兄○藤○義もともに所在不明であることが窺われるのであるが、家庭裁判所が非行少年を少年院に送致する旨の決定をするに際してはその両親その他家庭の保護能力の有無が仔細に検討されることは当然のことであつて、原決定が少年の家庭の保護能力の有無をその資料に供したからといつて何等の違法はないのであり、また、本件記録及び添付の少年調査記録を調査するに、少年の性格、素行、経歴殊に非行歴、生活環境、本件非行の動機、態様、家庭の保護能力等諸般の事情を考慮すれば、勤労をいとい無為徒食に明け暮れる仁侠の徒の社会に自己の安住の地を求めようとする少年の反社会的な性格を矯正し、少年の育成の場としては最も不適当と思われるやくざの徒輩の溜り場である肩書住居地の○倉○○ヱ方から少年を引き離し堅実な社会生活に順応さすためには、少年を一定期間少年院に収容して適正な矯正教育を施すことこそ最善の方策であると認められるから、原審の決定は相当であつて本件抗告はその理由がない。
よつて、少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 三野盛一 裁判官 小川豪 裁判官 木原繁季)